欧州ではなぜマニュアル車が主流だったのか?日本との違いと背景を徹底解説

シフトノブ
ヨーロッパではなぜマニュアル車(MT車)が多いのか、文化や制度の背景まで徹底解説します。日本やアメリカではオートマ車(AT車)が当たり前ですが、ヨーロッパでは古くからマニュアル車が主流だとよく言われます。

本記事では「ヨーロッパでMT車が多い理由」について、文化・教育、経済性、制度面まで掘り下げて解説します。
Chapter
ヨーロッパでマニュアル車(MT車)が選ばれてきた4つの理由
1. 歴史的に経済的だったMT車
2. 運転を楽しむ文化がMT操作を支持
3. 免許取得時からMTが標準の欧州教習
4. 山道・高速が多い欧州道路事情とMTの相性
日本とヨーロッパを分ける免許制度・交通環境・メーカー戦略の差
ヨーロッパでレンタカーを借りる前に知るべきMT/AT事情
EVシフトで変わるトランスミッション事情とMT車の未来
まとめ|ヨーロッパで失敗しない車選び・運転のコツ

ヨーロッパでマニュアル車(MT車)が選ばれてきた4つの理由

1. 歴史的に経済的だったMT車

ヨーロッパは伝統的にガソリン価格が高く、環境意識も高いことから、「経済的で燃費の良い車」が重視されてきました。歴史的に、MT車はAT車に比べて車両価格が安く、シンプルな構造で燃費も良かったため、「MTこそ合理的」という価値観が市場に長く根付いていました。

しかし、この状況は近年の技術革新で大きく変化しています。デュアルクラッチトランスミッション(DCT)やATの多段化(8速以上)により、現代のオートマチック車は多くの場合、MT車と同等かそれ以上に燃費が良くなっています。

そのため、「燃費が良いからMTを選ぶ」という理由は、過去のものとなりつつあります。

2. 運転を楽しむ文化がMT操作を支持

欧州のドライバーは車を自分で操ることに抵抗がなく、むしろ好む傾向があります。MT操作は「特別なことではなく当たり前」という意識が根付き、運転のダイレクト感や楽しさを重視する向きもあります。

3. 免許取得時からMTが標準の欧州教習

多くの欧州諸国では運転免許取得時にMT車での教習・試験が標準で、AT限定免許は少数派でした。このため「車の運転=MT操作」が基本とされ、結果的にMT車が市場で当たり前に選ばれてきました。

4. 山道・高速が多い欧州道路事情とMTの相性

欧州の道路は都市と郊外で制限速度が頻繁に切り替わり、山道やカーブも多く、MTならエンジンブレーキやトルクを自在に扱える利点があります。渋滞が日本ほど深刻ではないため、「ATのイージードライブ」の恩恵が相対的に小さいことも一因です。

日本とヨーロッパを分ける免許制度・交通環境・メーカー戦略の差

  • 免許体系の違い 
    日本では1990年代以降、AT限定免許を選ぶ人が急増しました。対してヨーロッパではAT限定はごく少数派にとどまっていました。MT車が多い環境では「どうせ取るなら制限のないMT免許を」と考える人が多く、需要も供給もMT中心となりました。

  • 交通環境の違い 
    慢性的な渋滞が多い日本ではクラッチ操作の不要なAT車の方が圧倒的に運転が楽です。一方、欧州では郊外や高速を爽快に走る用途が多く、MT車でも不便さは感じにくい環境があります。

  • メーカー戦略の違い 
    日本メーカーは国内市場向けに早くからATやCVTの開発・普及を進めてきました。対して欧州メーカーは長くMT車主体の市場に合わせて、MTの改良やDCTなどの開発に注力しました。このような技術開発の方向性の違いも、MTかATかの主流の差につながっています。

ヨーロッパでレンタカーを借りる前に知るべきMT/AT事情

ヨーロッパ旅行でレンタカーを借りる際には、日本人旅行者は特に「トランスミッションの違い」に注意が必要です。かつてヨーロッパのレンタカーはMT車が主流でしたが、近年はAT車の普及が急速に進んでいます。

しかし、依然として安価な小型車クラスではMT車も多いため、確実にAT車に乗りたい場合は予約時の指定が不可欠です。AT車を希望する場合は予約時に明確に指定し、早めに手配することをおすすめします。

また、AT車は同クラスのMT車に比べてレンタル料金が割高になる傾向があります。

日本の運転免許で国際運転許可証を取得する場合、AT限定免許だと現地でもMT車は運転不可です。レンタカー会社は免許を確認しますので、AT限定の場合はMT車を貸してもらえません。AT限定の方は必ずAT車を予約するようにしましょう。

EVシフトで変わるトランスミッション事情とMT車の未来

  • 多段AT進化で埋まる燃費・価格差

    多段ATやデュアルクラッチなどの技術進歩により、AT車の燃費がMT同等かそれ以上に改善しました。その結果「ATは燃費が悪い」という従来の前提が崩れ、経済的メリットでMTを選ぶ必然性が薄れました。

  • 欧州でも高まる“楽チン運転”志向

    都市部の交通量増大により、ヨーロッパでも渋滞が深刻化しつつあります。若い世代を中心に「運転は楽な方がいい」という志向が強まり、AT車の需要が高まりました。

  • 電動化が加速する欧州とMT消滅の現実

    欧州各国で環境規制が強化され、電動パワートレインの車が増えています。ハイブリッド車やEV車は構造上MTの設定がほぼありません。メーカー各社が「次世代はすべて電動化」という計画を打ち出す中、MT搭載モデルの終焉は既定路線と言えるでしょう。

  • スポーツ&疑似MTで残る“操る楽しさ”

    一部の車好きの間では「MTならではの操作を楽しみたい」という声も根強く、スポーツカー分野では今なおMTが支持されています。またトヨタなどがEVでマニュアル操作の感覚を再現する「疑似MT」システムの研究を進めており、将来電気自動車でもクラッチとシフト操作を疑似体験できる可能性も出てきています。

まとめ|ヨーロッパで失敗しない車選び・運転のコツ

  • 欧州でMT車が主流だった要因 
    歴史的に経済性や燃費が重視され、文化・免許制度・道路環境も相まって、欧州では長らくMT車が主流でした。

  • AT大国ニッポンとの決定的ギャップ
     慢性的な渋滞やAT限定免許の普及により、日本ではAT車が主流となりました。

  • レンタカー予約で失敗しないポイント
     欧州でレンタカーを借りる際はAT車の指定予約が安心です。AT限定免許の方はもちろん、MTの運転に不慣れな方は必ずAT車を早めに確保し、料金が割高になる点にも注意しましょう。

  • EV時代におけるMT車の行方 
    技術革新と環境ニーズの変化で欧州でもMT比率は急落しており、2030年前後には新車市場からほぼ消滅する見通しです。ただしスポーツモデルや疑似MT技術でマニュアル操作の楽しさを残す動きもあります。
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Source:
web.peugeot.co.jp
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